Story

楽園はどこにある!?
タイの娼婦たちと日本人が織りなす 失われた桃源郷(ユートピア)を取り戻すための旅が始まる-
タイの首都、バンコク。日本人専門の歓楽街タニヤ通りの人気店、「人魚」で NO.1 のラックは、イサーン(東北地方)からバンコクへ出稼ぎに出て 5 年が経 った。日本人のヒモ、ビンを連れまわし高級マンションでダイヤの首輪の犬と 暮らす一方、ラックの支える大家族は、遥かラオスとの国境を流れる雄大なメ コン川のほとり、ノンカーイ県に暮らしていた。ラックは種違いの弟を溺愛し ている。確執が絶えない実母と、今は亡きアメリカ軍人だった2番目の父との 息子、ジミー。

ある晩、謎の裏パーティーで、ラックは昔の恋人オザワと 5 年ぶりに再会する。ノンカーイから出て来たてだった ラックの初めての恋人がオザワだった。元自衛隊員のオザワは、日本を捨てバンコクで根無し草のように暮らしてい た。戸惑うふたり。今のオザワはネトゲで小銭を稼ぐ沈没組。だがラックに会うには金がいる。そんな折、 オザワはかつての上官、現在バンコクで店を営む富岡に、ラオスでの不動産調査を依頼される―。

かくして、いくつもの想いを胸に秘めたラックとオザワは、バンコクを逃れるように、国境へと、ノンカーイへと向かうことになったが。

古来、国境紛争に翻弄され続けたイサーン。物語は、その雄大な“イサーンの森”の闇の奥へと潜行し、舞台はやがて秘境ラオスへと、カメラはかつてインドシナを深く抉ったベトナム戦争の癒えぬ傷を映しはじめる。

監督 富田克也

1972 年山梨県生まれ。2003 年に発表した処女作、『雲の上』が「映画美学校映画 祭 2004」にてスカラシップを獲得。これをもとに制作した『国道 20 号線』を 2007 年に発表。『サウダーヂ』(’11)ではナント三大陸映画祭グランプリ、ロカルノ国 際映画祭独立批評家連盟特別賞を受賞。国内では、高崎映画祭最優秀作品賞、毎 日映画コン クール優秀作品賞&監督賞をW受賞。その後、フランスでも全国公開 された。最新作はオムニバス作品、 『チェンライ娘 (『同じ星下、それぞれ夜よ り』)』(’12)。